本年4月、小淵沢にオープンしました。
1980年代ニューヨークのアートシーンを席巻したアーティスト、キース・ヘリングのコレクションのみを展示する、世界で初めてのプライベート美術館です。
建築家 北川原温氏の、斬新な外装・内装にも注目。
「キース・ヘリングの世界 混沌から希望へ」をテーマに、3つのコンセプトをもった展示空間が用意されています。
展示室“闇”につながるスロープは、手探りしてしまうほどの暗さ。
なにも怖いことなんかない、と思っていても、やっぱりどこか不安な気持ちになりますね。
天井や床の仕掛けや、展示室の内装などは まさしくカオス。
彼の作品の中でも、とりわけメッセージ性の強い作品が並んでいます。
あとに続く展示室“ジャイアントフレーム”には、シルクスクリーン作品やリトグラフ作品が壁一面にびっちりと敷き詰められ、まるで1枚の巨大な作品のよう。
それゆえに“ジャイアントフレーム”という名前がついているようです。
おそらく、わたしたちが いちばん目にする機会の多い、キース作品のカタチ。
最後の展示室“希望”は、とても特殊な構造。
たくさんの曲線が使われた部屋で、平衡感覚がおかしくなりそうです。
それでいてひどく開放的に感じるのは、最長部で12mある天井と、日の出の照度と同じ明るさに設計されているという照明のせいでしょう。
色鮮やかな、大型作品が展示されています。
全体的な感想としては、観る側が自由に作品を受けとめるというよりも、キースのメッセージを正確に伝えたいんだろうな、という印象を受けました。
これは決して悪い意味じゃなく、そのくらい大切なことをキースの作品は教えてくれるんです。
小淵沢は、かつて縄文文化が隆盛を極めた場所であり、1000mの気候は生命を育む母胎の環境と似ているそうです。
キースの作品は、一見 自然や緑からはかけ離れているように思えますが、ニューヨークという大都市が生み出した無数の「生」のエネルギーと、八ヶ岳の自然が宿すエネルギーが向き合う場として、見事に融合しています。